1939 グレッチ シンクロマチック160 / ブロンド
百二十万円 2620グラム



          

非常に珍しいキャッツアイ・サウンドホールのシンクロマチック160です。

この年代のシリアル・ナンバリングが判然としていないので100%まで断言はできませんが、スペックとシリアル・ナンバーの低さから恐らくファースト・イヤーと思われます。

通常のラインはサンバースト・フィニッシュのみで、このブロンド・フィニッシュはオーダーによってのみ生産を受け付けていたもので、生産数は非常に少ないはずです。

サンバースト・モデルは白黒の積層によるバインディングですが、この特注のブロンド・モデルのみピックガードとマッチングしたド派手ななストライプ柄のべっ甲バインディングという仕様です。

まずは、感じて下さい、このルックス!

大胆な流線型の「ストリーム・ラインド・ホール(通称:キャッツ・アイ・サウンドホール)」はべっ甲柄のバインディングが施されて、このギターの美しさを際立たせています。

更には流線型のゴージャスなべっ甲柄ピックガード!ストライプ模様が美し過ぎます。

更にこのギターを印象深くしているパーツが、モデル名の由来でもある「シンクロナイズド・ブリッジ(通称:ステアー・ステップ・ブリッジ)」と「クロマチック・テイルピース(通称:ハープ・テイルピース)」です。独特なデザインですねぇ、、、時代的にアール・デコの影響によるものと見て良いのでしょう、美しいです。

ヘッドシェイプも見て下さい。

独特でしょ〜、39年から47年頃までにしか見られないライトバルブ・シェイプ(電球型)・ヘッドというヤツです。

筆記体で「グレッチ」と「シンクロマチック」のロゴが埋め込まれています。

ボディ・シェイプもスーパー・オーデトリウムという所謂、瓢箪型なのですが50年代の物と比べると、シェイプのくびれ部分の深さがより強いので、このギターのケースには50年代のシンクロマチックやカントリー・クラブは例え同じ17インチ・サイズであっても収まりません。

細かい所で言えば、ハープ・テイルピースの「GRETSCH」ロゴの刻印も後年の物とはデザインが異なっていますね。

洋書のジェイ・スコット著「The Guitars of the Fred Gretsch Company」(通称:グレッチ・ブック)の15ページでジャンゴ・ラインハルトが弾いている物に似ていますがあちらは18インチ・ボディの最上級機種のシンクロマチック400のブロンド・モデルです。

今回のギターのサンバースト・モデルをジョージ・マイケルがヒット曲「フェイス」のプロモ・ビデオで使用していますよね。

今回入荷した物は17インチ・ボディで、全く同じスペックのギターが先述のグレッチ・ブックのカラー・グラビア・ページに掲載されているのですが、そちらでは「シンクロマチック200」と紹介されています。但し、1939年のカタログに基づけば、クローム・パーツである点、ペグに彫刻が入っていない点、バインディングの積層が3層しかない点、指板のインレイがハンプ・インレイではなく、ブロック・インレイである点、等の理由により、「160モデル」と判断するのが妥当と思われます。

ただ、このギターでは当時のカタログでは紹介されていない、指板のブロック・インレイにベッ甲柄のスラッシュ・ラインが入っているので見方によっては上位機種?という臭いも感じられなくはないのです。

17インチ・ボディの最上級機種「モデル300」やシンクロマチック・ラインナップの最上級機種18インチ・ボディ「モデル400」ではゴールド・スラッシュ入りのハンプ・トップ・インレイとなっていて、指板インレイにスラッシュ・ラインが入っている事によって上位モデルである事の差別化が行われていることから、グレッチ・ブックでは17インチ・ボディであるこのモデルに於いても「モデル160」の上位機種に当たる「モデル200」であろう、と判断されたのかもしれません。

さて、このギターですが流石に古過ぎて、もう知らない事ばかりです。

まず、スケールが26インチ!通常50年代の#6120が24 3/4インチで、50年代のホワイト・ファルコンですら25 1/2ですから、か〜なり長いです。

当然弦テンションが増す訳ですが、それほどキツくは感じません、ネックセット角もしっかりしているのにむしろ非常に弾きやすい。

その理由が当時のカタログで大々的に謳われている「ノン・プレッシャー・ネック」「スリム、イージープレイング・ネック」による効果ですね。

まずはネックが異常に細いです!通常のギターはネック幅が42〜43ミリ程度ですが、このギターは41ミリのナット幅です。

更に12フレット・ポジションで見ると通常が52〜53ミリ程度であるのに対し、このギターは48.5ミリ!

ロー・ポジからハイ・ポジへのテーパーがあまり無いんですね。

それでいて弦高も12フレット位置で2ミリ弱でビビらず、尚且つ下げる幅がある。

滅茶苦茶弾き易いんですよ。

ネック状態もほぼ真っ直ぐです。

強いです。74歳ですよ!?

そして、もう一つの弾き易い理由が「ノン・プレッシャー・ネック」という、左右非対称のグリップ・シェイプ。

通常のギターはグリップシェイプの中央、つまり3弦と4弦の間の真裏にシェイプの山の頂点があるわけですが、この「ノン・プレッシャー」は4弦と5弦の真裏に山のピークがあります。

左右非対称と聞くとちょっと奇をてらっているようで引いて聞いてしまうかもしれませんが、百聞は一見にしかず、というヤツで握ってみるとハッとするぐらい腑に落ちます、非常に心地良い握り心地で、弦を押さえるのに全然力が要らない感じなんです。

ちょっとこれは驚きですよ!

上手く表現できないのですが、もうハイポジまでスルスル〜っ、という感じです、、、。

トップ板のアーチも非常に強くしっかりしていて、全くトップ落ちする気配などありません。

サウンドの方もバッチリです!

まず、音がバカでかい!

アーチトップなので、フラット・トップとは違う系統の鳴り方ですが、凄いですパワフルに「ジャッキーンッ!」です。

これで戦前モデルですよ。

トップ落ちもせず、ネックも反らず、ネックジョイントが外れる気配もなく、サウンドもバッチリ!

30年代のクラフトマンシップのクオリティの高さを見せつけられる思いです。